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経営分析及びデータの活用
-スマート農業技術の効果を最大限に発揮し得る経営モデル 2023年度-
【技術面・経営面からの分析】

本年度の実証結果においては、北海道大学指導のもとたい肥を全層散布で実施したことや追肥時期での可変施肥が間に合わなかったこともあり、実証による経営改善効果を十分に検討できるデータがそろわなかった。そのため、スマート農業技術の効果を最大限に発揮しえる経営モデルの作成にあたっては、課題設計書ベースとその発展型(地域内の優良経営をモデル化)をもとに下記を記載した。

なお、タマネギ作を含めた農業経営モデルは、作成にあたり資料2の作型別技術体系はあるものの、作型や作期調整する、他品目との機械装備の整合性を図る、作付順序および作付比率を設定する、実証経営を含めた地域内の作物振興方針を確認し畑地化・水田維持などのパターンを設定する等の操作を検討中であり、今年度は水稲および畑作物による農業経営モデル分析のみを掲載した。

【シナリオ・考え方】

<農業経営モデルの基本設定>
実証経営体を前提に、下記のように設定した。①労働力:家族労働力(基幹1名・補助1名)、②土地所有:自作地、③スマート農機:自動操舵システム(トラクター3台)・可変施肥機能付きブロードキャスタ・収量コンバインを個別所有、④作型別作業時間:資料1をベースに③の機械導入に合わせ作業能率向上、⑤農産物販売価格:資料2、⑥慣行肥料投入量および価格:資料2をベースにN施肥は課題設計書に合わせ変更、⑦その他資材投入量および価格:資料1

資料1:空知農業改良普及センター「いわみざわ農業生産技術体系2018年版」
資料2:空知農業改良普及センター「いわみざわ農業生産技術体系2023年版」

[シナリオA]基本型

水田において、3作物で5年輪作を行うモデルを設定した。本シナリオでは、前提として持続的に高い生産性を発揮する農業経営として、規則的な5年輪作(連作なし)を行っている。作物作型は、水稲(乾田直播栽培)・大豆(狭畦密植栽培)・秋小麦(大豆間作栽培)の3つを採用する。作付順序は、[水稲→大豆→秋小麦→大豆→秋小麦]、作付比率は水稲:大豆:秋小麦=1:2:2とする。
表1にシナリオAにおける慣行と技術導入後の変化項目をまとめた。堆肥は、水稲・大豆栽培年次に投入する(5年中3年)。化学肥料(N肥料)は、3作物全てで削減する。単収は、土壌診断に基づく投入量変更と可変施肥の効果により3作物全てで向上することを想定している。
表1 シナリオA(5年輪作3作物)における慣行と技術導入後の変化項目
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[シナリオB]発展型

水田において、5作物で5年輪作を行うモデルを設定した。本シナリオでは、前提として持続的に高い生産性を発揮する農業経営として、規則的な5年輪作(連作なし)を行っている。作物作型は、水稲(乾田直播栽培)・てん菜(直播栽培)・大豆(狭畦密植栽培)・秋小麦(大豆間作栽培)・なたねの5つを採用する。作付順序は、[水稲→てん菜→大豆→秋小麦→なたね]とし、作付比率は1品目20%とする。

表1にシナリオBにおける慣行と技術導入後の変化項目をまとめた。堆肥は、水稲・大豆・てん菜栽培年次に投入する(5年中3年)。化学肥料(N肥料)は、5作物全てで削減する。単収は土壌診断に基づく投入量変更と可変施肥の効果により5作物全てで向上することを想定している。単収は、複数作物での規則的な輪作により、シナリオA に対し各作物の収量がワンランクアップすることを想定している。慣行単収は、資料2に記載されている地域目標単収で、技術導入後は、本実証事業の課題設計書と同等の増加率で単収が増加している。
表2 シナリオA(5年輪作5作物)における慣行と技術導入後の変化項目
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<線形計画法による分析結果>

線形計画法による農業経営モデル分析の結果を表3に示した。
経営面積は、シナリオA により3作物5年輪作で拡大できる面積は26.8ha、シナリオB により5作物5年輪作で作業分散しながら拡大できる面積は39.5haである。シナリオA・Bともに、利用可能な労働力および作型別の旬別労働時間は一定であり、作付比率も固定していることから、新技術導入前後で経営面積および品目別作付面積は変化しない。
シナリオAの変化をみると、収量増加により粗収益が増加、肥料費・賃借料(作業委託費)・光熱動力費等の変化により変動費が増加し、その結果農業所得が738 万円→840 万円と14%増加している。当期純利益は、608万円→710万円と17%増加している。
シナリオBの変化をみると、収量増加により粗収益が増加、肥料費・賃借料(作業委託費)・光熱動力費等の変化により変動費が増加し、その結果農業所得が1,401 万円→1,580 万円と13%増加している。当期純利益は、1,181万円→1,361万円(別表)と15%増加している。
表3 堆肥投入・可変施肥導入前後の収益性変化(農業経営モデル分析結果)
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【シナリオA】 5年輪作3作物 化学肥料削減後
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【シナリオB】 5年輪作5作物 化学肥料削減後
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-スマート農業技術の効果を最大限に発揮し得る経営モデル 2024年度-
【技術面・経営面からの分析】
 

・現地データ(収量、 圃場裸地画像、土壌分析)、施肥設計、堆肥投入マップの作成および散布を生産者個人で全て行うことは困難であり、JA 等農業関係機関が主体となり、専用サービスや地域企業などとの連携体制を構築し運営していくことが必要と考える。

・令和 6 年度実証では、 一部を除き、化学肥料削減、 農家収益(売上)向上の目標を達成することが出来なかった。実証での収量変化、化学肥料の削減効果による収益では、 現状の堆肥投入費用を賄うことが出来なかったと考えられる。

・化学肥料削減、農家収益(売上)向上については、継続した堆肥投入により改善が期待でき、地域での堆肥散布作業面積の拡大により、堆肥投入にかかる費用が軽減することが可能と考えられる。



【シナリオ・考え方】

<前提>

・牛ふん堆肥投入の効果 →化学性に限定 化学肥料の投入削減

※物理性の改善により耕耘回数の減少 (労働時間変化)なども想定されるが、経営体ごとに多様な判断・作業体系があり、本実証のみで導入後のパターンを確定させるのが難しい。そのため、本分析では標準技術をベースとし、作業体系は導入前後で一定とする。

・労働時間および機械装備は変化なし

=堆肥投入・可変追肥に関する作業は外部委託(委託費計上)

※労働力不足 ・機械過剰装備による高コスト化が地域的な課題となっている。 地域全体で、堆肥投入を促進するためには、外部委託体制を構築し、安価かつ安定的に堆肥を利用できることが重要であるため。

<実証結果の反映>
 

・輪作体系 実証品目をもとに5年輪作を想定

シナリオ A:基本型(3品目5年輪作)

地域平均像をモデル化

シナリオ B:発展型(5品目5年輪作)

実証経営を含む理想的な大規模水田輪作経営をモデル化 ※実証外品目は目標設定

シナリオC:高収益作物型(タマネギ複合5年輪作)

実証経営を含む野菜複合経営をモデル化 ※相対的に労働力が多い2世代家族経営

・化学肥料削減率 慣行→施工の削減率のうち最大値を用い、モデル経営の平均削減率とする

目標値は課題設計書上の削減率とし、モデル経営の平均削減率とする

・堆肥投入量 平均1t/10a とし、土壌診断結果をもとに圃場別投入量を決定する

※地域全体の投入量を固定することが、堆肥購入金額・散布金額の低廉化の前提となるため

(実証投入量は施肥設計 0.3~1.95 t/10a、施工区 0.2~2.0 t/10a)

・単収 導入前後で一定とする

<下限委託費用を設定>

●この条件下でシナリオ A・B が収益一定となる堆肥投入経費、ドローン可変追記経費を試算

表1 シナリオA(5年輪作3作物)における化学肥料削減量と削減金額
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→単収変化なし、実証換算の化学肥料削減率の場合 導入前提となる追加経費

堆肥散布経費 4,339 円/10a 未満

ドローン可変追肥 574 円/10a 未満

→単収変化なし、目標換算の化学肥料削減率の場合 導入前提となる追加経費

堆肥散布経費 7,123 円/10a 未満

ドローン可変追肥 637 円/10a 未満

表2 シナリオB(5年輪作5作物)における化学肥料削減量と削減金額
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→単収変化なし、目標換算の化学肥料削減率の場合 導入前提となる追加経費

堆肥散布経費 6,054 円/10a 未満

●実証換算の化学肥料削減率でも収益確保が見込める下限的な単価設定

堆肥散布経費 1t投入 4,300 円/10a ※堆肥金額+散布委託費+マップ作成費込

ドローン可変追肥 2回 500 円/10a (1回 250 円/10a)

なお、シナリオ C については、タマネギの化学肥料削減率が相対的に低いため、収益確保が見込める下限的な単価設定はより低価格となる。タマネギ複合経営については、より進んだ化学肥料削減パターンを検討する必要があると想定し、本分析での下限価格設定の条件からは除外した。

表3 シナリオ C(タマネギ複合)における化学肥料削減量と削減金額
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【経営モデルの設計】

<最大限に発揮するモデルの想定>

・堆肥投入量 平均1t/10a とし、土壌診断結果をもとに圃場別投入量を決定する

・堆肥投入経費 試算により得た下限的な単価設定を用いる

・ドローン可変追肥経費 試算により得た下限的な単価設定を用いる

・化学肥料削減率 実証換算値と目標換算値の2段階を設定する

<農業経営モデルの基本設定>

実証経営体を前提に、下記のように設定した。

[不変要素] (シナリオ ABC 共通)

① 労働力 :シナリオ A・B→家族労働力(オペレータ1名+補助1名=計2名)、

シナリオ C→家族労働力(オペレータ2名+補助 0.5 名=計 2.5 名)

② 土地所有 :自作地

③ スマート農機: 自動操舵システム(トラクター3台)など大型高性能機械を利用

④ 作型別作業時間 :資料1をベースに機械ラインナップ(③)に合わせ作業能率を設定し、

シナリオ A・B→オペレータ1名・旬別 64 時間上限、労働力2名・旬別 128 時間上限、シナ

リオ C→オペレータ2名・旬別 128 時間上限、労働力 2.5 名・旬別 160 時間上限

⑤ 農産物販売価格: 資料1

⑥ 実証対象以外の資材投入量および価格 :資料1

資料1:空知農業改良普及センター「いわみざわ農業生産技術体系 2023 年版」

[シナリオ A]基本型 3品目5年輪作

水田において、3作物で5年輪作を行うモデルを設定した。

本シナリオでは、前提として持続的に高い生産性を発揮する農業経営として、規則的な5年

輪作(連作なし)を行っている。作物作型は、水稲(乾田直播栽培)・大豆(狭畦密植栽培)・秋

小麦(大豆間作栽培)の3つを採用する。作付順序は、 [水稲→大豆→秋小麦→大豆→秋小麦] 、

作付比率は水稲:大豆:秋小麦=1:2:2とする。単収は、農林水産省「作物統計」岩見沢市

の直近7ヶ年の単収の最高・最低を除いた5年平均値とし(水稲は直播のため係数 0.9 を乗じ

る)、水稲 541kg/10a、大豆 268 kg/10a、秋小麦 458 kg/10a とする。

[可変要素]

① 窒素肥料投入量と肥料価格 :表1より導入前=標準技術 導入後=実証および目標換算

② 堆肥投入量 :導入前 0 導入後1t/10a

③ 堆肥投入経費:4,300 円/10a

④ ドローン可変追肥経費 500 円/10a

[作付順序]
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[シナリオB]発展型 5品目5年輪作

水田において、5作物で5年輪作を行うモデルを設定した。

本シナリオでは、前提として持続的に高い生産性を発揮する農業経営として、規則的な5年輪作(連作なし)を行っている。作物作型は、水稲(乾田直播栽培)・大豆(狭畦密植栽培)・秋小麦(大豆間作栽培)・てん菜(直播栽培)・なたねの5つを採用する。作付順序は、[水稲→大豆→秋小麦→てん菜→なたね]とし、作付比率は1品目 20%とする。単収は、模範的な5作物輪作を行えば、地域平均よりも高単収を実現できることを想定し、資料1記載の地域目標値から、水稲 540 kg/10a、てん菜 6,700 kg/10a、大豆 300 kg/10a、秋小麦 540 kg/10a、なたね 300kg/10a とする。

[可変要素]

① 窒素肥料投入量と肥料価格 :表2より導入前=標準技術 導入後=実証および目標換算

② 堆肥投入量 :導入前 0 導入後1t/10a

③ 堆肥投入経費:4,300 円/10a

④ ドローン可変追肥経費 500 円/10a

[作付順序]
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[シナリオC]高収益作物型 タマネギ複合5年輪作

本シナリオでは、前提として労働力が多い2世代経営が持続的に高い生産性を発揮する農業経営として、高収益作物を含めた規則的な5年輪作(連作なし)を行っている。作物作型は、水稲(乾田直播栽培)・大豆(狭畦密植栽培)・秋小麦(大豆間作栽培)・タマネギ(春まき栽培)・秋小麦(慣行)の5つを採用する。作付順序は、 [水稲→大豆→秋小麦→タマネギ→秋小麦]とし、作付比率は1品目 20%とする。単収は、露地野菜を含む5作物輪作を行えば、地域平均よりも高単収を実現できることを想定し、資料1記載の地域目標値から、水稲 540 kg/10a、大豆300 kg/10a、秋小麦(大豆間作 540 kg/10a、慣行 570 kg/10a)、タマネギ 4,200 kg/10a とする。

[可変要素]

① 窒素肥料投入量と肥料価格 :表3より導入前=標準技術 導入後=実証および目標換算

② 堆肥投入量 :導入前 0 導入後1t/10a

③ 堆肥投入経費:4,300 円/10a

④ ドローン可変追肥経費 500 円/10a

[作付順序]
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【経営モデル 線形計画法による分析結果】

農業経営モデルを用い線形計画法によるシミュレーション分析を行った結果を表4・表5に示した。

経営面積は、シナリオAの基本型3作物5年輪作モデルは27.0ha、シナリオBの発展型5作物5年輪作モデルは 41.0ha、シナリオCの高収益作物型タマネギ複合5年輪作モデルは31.8haである。作物数を増やして作業分散した発展型5作物モデルの方が、同一の労働力でも作業可能面積が大きくなるため、基本型3作物モデルに対し経営面積は大きくなっている。相対的に労働力が多い高収益作物型タマネギ複合モデルは、高収益作物を加えることで基本型と発展型の中間的な経営面積で、より高い利益を実現している。

なお、シナリオA・B・Cともに、利用可能な労働力および作型別の旬別労働時間は一定であり、作付比率も固定していることから、新技術導入前後で経営面積および品目別作付面積は変化しない。

シナリオAの変化をみると、化学肥料削減程度が実証水準の場合、下限的な堆肥投入および可変追肥経費を採用すると、変動費の増減がほぼ相殺され、農業所得および当期純利益はほぼ変化しない。 同一の追加経費設定で、 化学肥料削減程度が目標水準になれば、農業所得は595万円→638万円と7%アップ、当期純利益は478万円→521万円と9%アップする。

シナリオBの変化をみると、化学肥料削減程度が実証水準の場合、下限的な堆肥投入および可変追肥経費を採用すると、変動費の増加が減少を上回り、農業所得は1,185万円→1,198万円と1%アップ、当期純利益は989万円→1,002万円と1%アップする。同一の追加経費設定で、化学肥料削減程度が目標水準になれば、農業所得は 1,185万円→1,231万円と4%アップ、当期純利益は989万円→1,036万円と5%アップする。

シナリオCの変化をみると、化学肥料削減程度が実証水準の場合、下限的な堆肥投入および可変追肥経費を採用すると、変動費の増加が減少を上回り、農業所得は1,857万円→1,723万円と7%ダウン、当期純利益は1,497 万円→1,362万円と9%ダウンする。同一の追加経費設定で、化学肥料削減程度が目標水準になれば、農業所得は 1,857万円→1,875万円と1%アップ、当期純利益は1,497万円→1,514万円と1%アップする。

表4 堆肥投入・可変施肥導入前後の収益性変化(農業経営モデル分析結果 A・B)
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表5 堆肥投入・可変施肥導入前後の収益性変化(農業経営モデル分析結果 C)
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【シナリオ A】 5年輪作3作物 化学肥料削減 目標水準
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【シナリオ A】 5年輪作3作物 化学肥料削減 目標水準
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【シナリオ C】 タマネギ複合5年輪作 化学肥料削減 目標水準
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