-施肥・追肥-
2025年度
検証の目的
・VTOL 型、マルチコプタードローンで取得した NDVI 画像をエアロセンス社製システムにて解析および散布マップの作成を⾏い、可変散布を実施(秋⽥︓追肥箇所の検討及び有機物マップの作成・分析)。
・従来型のブロードキャスタで⼀様散布後にドローンによるスポット散布を⾏う事で可変散布対応ブロードキャスタと類似の効果を得ることの検証。
・⼀様散布とスポット散布の適正な散布構成について整理を⾏い、散布作業のコスト削減体系の構築。
検証の内容
<作業・栽培の条件と条件設定の考え⽅>

①旭川市
・湛⽔直播⽔稲、⼤⾖においては、R7年度は機材納品が遅れたことにより、可変散布の実施が叶わなかった。秋まき⼩⻨(⼤⾖間作)についてはR8年度の作業となる。
・本実証では、ドローン計測(VTOL、回転翼)にて計測される画像(NDVI 画像)を利⽤した可変施肥マップの利⽤を⾏うものとしている。ただし、⼈⼯衛星画像からの可変施肥マップ(KSAS)も⼀般的に利⽤されている。ドローン、⼈⼯衛星はそれぞれの解像度が⼤きく異なることから、同⼀圃場における基礎画像の解像度の差異による可変施肥資材量に係る相違も検証する。
②秋⽥県
・秋⽥県農業試験場の⼤⾖圃場においては、⽣育状況から NDVI 画像を作成し、追肥箇所選定に向けた⼿法を確⽴する。
・⼤⾖作により腐植含量等の低下が発⽣しやすくなると考えられる対策として、有機質肥料投⼊が⾏われている。そのため、各種有機質肥料施⽤による有機物分布の相違をドローン画像から⾏い、傾向分析を⾏う。
・⽔稲圃場(移植⽔稲)においては、追肥箇所選定に向け、NDVI 画像と分げつ数傾向マップを⽤いた2つの⼿法を検討する。
<検証ほ場等の特徴>
①旭川市
・本検証では、⼤区画と⼩区画の圃場を選定している。

<検証ほ場等の特徴>
②秋⽥県
・⽔稲圃場においては、H1 では秋⽥県農業試験場が前年度収量マップから、基肥の可変施肥を実施している圃場であり、H2〜4 は⼀律の施肥を⾏なっている。
・⼤⾖圃場については、8区画に分け、鶏糞堆肥+⽣活由来残渣堆肥、⽜糞堆肥+もみがら堆肥、無窒素、化学肥料の4種類(各2区画)の施肥となっている。
・⼤⾖圃場の各区分での⼟壌診断結果において、E3>E4,F1>F2>E2>F4>F3>E1 の順で有機物含有量となっている。

検証の内容
①画像解像度別資材投下量の⽐較
・47-1圃場において、7⽉3⽇にドローン計測を⾏い、これに近い計測⽇である7⽉5⽇計測のSentinel-2、KSASで利⽤されるPlanet Labs(7⽉5⽇計測)の解像度の差異によるメッシュサイズごとのピクセル数を⽐較、検証した。

・可変施肥マップは通常、ブロードキャスタの散布幅に応じてメッシュサイズが決定される。そのため、それぞれの画像をもとに 5m、10m、15m、20m 幅で散布する。そのため、それぞれに 5m メッシュ、10m メッシュ、15m メッシュ、20m メッシュとなる。
・ドローン計測画像解像度は 4.17cm である。
・センチネル 2 については、現在は KSAS では利⽤されていないが、曇天時の取得画像不⾜を補完するため、R8 年度から採⽤が周知されている。そのためこれについても⽐較の対象とした。これは取得画像が10m 解像度であるため、5m への縮⼩については、検討しないものとした。
・Planet Labs については、3m〜5m 解像度とされていることから 5m 解像度であるとした。
・各画像を NDVI 画像に変換の上、同値の min〜max までの値を 5 段階に分類した(表 4)。
・ただし、メッシュが圃場縁からはみ出す場合には、圃場内のみとなるようメッシュを分割した。これは、可変散布機(ブロードキャスタ)では圃場縁からはみ出した散布が⾏われないためである。

・ドローン、Sentinel-2、Planet Labs のメッシュサイズ(5m~20m)ごとの個数の分布⽐較を⾏った(3)。
・各メッシュサイズにおいて、NDVI 値による分類については、元となる解像度が⾼い画像ほど、5段階に分類される傾向となった。また、各段階におけるピクセル数の割合についても同⼀傾向とはならなかった。

・各画像におけるメッシュサイズ変更による5段階別の総ピクセル数に占める割合を⾒ると、解像度が⾼いドローン画像では、メッシュサイズを拡⼤すると分類傾向が異なるものとなった。Sentinel-2 では、傾向は同様であるが、割合の変化が④、⑤の NDVI 値が低い箇所 で発⽣した。Planet Labs については、ほぼ同様の傾向となったが、メッシュサイズの変更により、割合が変化した。

・上記の分類に基づき、湛⽔直播⽔稲の追肥に対する資材投下量を試算した。試算においては、北海道⽣産技術体系(第6版)「 湛⽔直播⽔稲」の追肥量(尿素2kg/10a)を5段階分類の中間である③に適⽤し、それ以外は 0.25kg/10a ずつ増減するものとした(表5、図5)。

・ピクセル数割合と同様にドローン、Sentinel-2 はメッシュサイズの変更に伴い、同⼀圃場においても資材投下総量が変化するものとなった。
・各画像のメッシュサイズ変更による相違による資材投下量の変化が発⽣する要因については、再度、他の時期の情報も含めて、検証を⾏うことが必要と考える。

②⽔稲、⼤⾖追肥時期へのセンシング画像活⽤の検討
・秋⽥県では、⼤⾖については、開花期の窒素追肥を想定していることから、同時期のドローンセンシング画像から、NDVI 画像を作成の上、⽣育良否の傾向が適合しているかの検討を⾏った。
・⽔稲については、追肥を奨励しているものの、追肥が必要かの指標が必要であるとなっている。これの指標として、図6に⽰すように葉緑素計値と⽣育指数(草丈×m3 茎数)の相関関係で⾒るものとなっている。
・NDVI 値と⽣育指数は正相関になることが知られていることから、DSM×茎数=f(NDVI)と考えられる。草丈についてはドローン計測画像から得られる DSM(Digital Surface Map)を適⽤することが可能であると考えた。また、秋⽥県よりは茎数が不⾜している場合に追肥を⾏うことも検討可能との意⾒から、茎数=NDVI/DSM で茎数の傾向を把握可能かの検討を⾏った。
・また、これと併せて NDVI による⽣育傾向も検討を⾏った。

③⼤⾖⽣育の判断
・⼤⾖⽣育期間中の NDVI 画像(2025年7⽉16⽇計測:開花期前)を⾒ると、鶏ふん堆肥区(E4,F2)>⽜ふん堆肥区(E3,F1)>無窒素区(E1,F3)>化学肥料区(E2,F4)の順に全体の NDVI 値が低い傾向と⾒られる(図7、8)。

・各施肥区別単位⾯積あたり収穫量を⾒ると、鶏ふん堆肥区(E4,F2)>⽜ふん堆肥区(E3,F1)>化学肥料区(E2,F4)>無窒素区(E1,F3)の順となり、化学肥料区と無窒素区が NDVI 値の傾向と逆転しているものとなった(表7)。

・⼤⾖作を⾏うにあたり、地⼒として⼟壌有機炭素含有量との関係性を⾒た(図9)。鶏ふんを利⽤した区を除き、初期の⼟壌有機炭素含有量と収量の相関があると考えられる。鶏ふんについては、肥料としての効能の⽅が⾼いことから、成⻑に影響を与えたことも考えられる。
・上記のことから、NDVI 値の傾向により収量との相関があると考えられた。また、追肥については、全層散布を⾏うことは経営コストの負担となることから、各区内で NDVI 値の低い箇所への散布を⾏うことで、収量の向上に資すると考えられる(図 10)。

④有機物分布傾向
・③において、⼟壌有機炭素含有量と収量の相関が⾒られたことから、有機物含量についての傾向を事前に把握し、次年度以降の有機質資材投⼊、すき込みを含めた対応を検討することが有効であると考えられる。
・図 11 に 11 ⽉ 26 ⽇に計測したドローン画像の⾚⾊画像を⽰す。⾚⾊画像は表そう⼟壌有機物と負の相関を⽰すことが知られている。これを⾒ると無窒素区(E1,F3)で有機物の分布が他の区に⽐べ少ない傾向が⾒られた。

・図 12 に 11 ⽉ 26 ⽇に計測したドローン画像からの施肥区別の有機物傾向マップのピクセル数を⽰す。これを⾒ると、化学肥料区(F4)、鶏ふん区(E4)で有機物含量の多い箇所割合が⾼いと考えられる。

・各施肥区の画像を⾒ると、有機物の少ない箇所については、有機物分布のばらつきが多い箇所が⾒て取れる(図 13)。特に無窒素区(E1)では、有機物含量が少ない箇所が⼤きく存在している。次年度の有機質資材の投⼊やすき込みに係る資料となることが⽰唆された。

⑤移植⽔稲の追肥箇所選定
・7 ⽉ 16 ⽇計測(幼穂形成期)の画像から、NDVI 値画像と NDVI/DSM 値画像を作成した(図14)。圃場内において、⽣育の不均⼀性が発⽣していると考えられる。また、NDVI 値画像と NDVI/DSM 値画像を⽐較するとほぼ同様の傾向となっている。

・DSM は、図 15 に⽰すように NDVI 画像、NDVI /DSM 値画像とは傾向が異なっている。次年度に⾃然⾼さと各画像との相関性について検討することが必要と考える。

・収量コンバインから得られた収量と両画像傾向の⽐較を⾏った(図16)。
・⼀部において、画像と同⼀とは考えられない箇所もあるが、ほぼ、画像と同様の傾向となっている。そのため、次年度において、追肥を⾏うことで、⽣育改善を⾏い、収量向上に資するものであると考えられることとなった。

次年度の計画案
・R8 年度はエアロセンス社製クラウドサービスを利⽤し、可変施肥、スポット散布、有機質肥料投⼊必要箇所の抽出及び散布マップの作成を実施する。ただし検証として、本年度と同様の⼿法での解析も⾏う。
・衛星画像利⽤においての検証も他の作物も含めて、検証を⾏う。特に KSAS では、2026 年1⽉よりスタンダードプラン(利⽤衛星︓Planet、料⾦︓800 円/ha)と 2026 年3⽉よりライトプラン(利⽤衛星︓Sentinel-2、料⾦︓400 円/ha ※可変施肥マップ作成への活⽤不可)の情報配信も予定されていることから、再度、資材投下量についてドローン画像との⽐較を⾏う。
・⽣育不良箇所を抽出した上で、追肥を実施し、⽣育の均⼀化及び収量変化を取得し、肥料費・散布コストも勘案した上で試算を⾏う。
・次年度については、輪作体系を組んでいるため、⼤⾖圃場の有機物の多寡をマップで整理するとともにこれを⽤いた今後の作付け体系への利⽤を検討する。
・DSM が NDVI/DSM 値画像に与える影響要因について、現地⽣育調査において明確にする。
